災害廃棄物対策に関して今後取組むべき事項とその進め方(令和2年3月)
1. 全国レベルでの検討
(1)継続的な災害廃棄物対策の検討
- 令和元年度は、令和元年台風第15号、第19号をはじめとして、非常に広範囲で甚大な被害が生じ、廃棄物処理施設の被災、収集運搬体制の確保、仮置場の設置・管理・運営、広域処理を含む処理先の確保、情報収集・集約・発信等において、検討すべき課題が生じた。各検討課題に係る検証結果を踏まえ、環境省における今後の検討を深めると共に、関係機関との連携・調整や、地域ブロック協議会や各ブロックの説明会等を通じた自治体へのフィードバックを実施し、豪雨災害時期に備えた対策強化を促進する。
- 各関係機関とのさらなる連携の強化・円滑化に向けて、意見交換の実施や連携マニュアルの作成等の具体策の検討等を実施し、円滑・迅速な災害廃棄物処理体制の構築を図る。
- 災害廃棄物処理を経験し、知見を有する自治体職員の人材バンクの試行を通じ、人材のリストアップを進め、発災時の運用面における改善を図る。
- 環境省職員が、限られた人員、限られた時間の中で、効果的な現地支援を実施するため、優先順位をつけて対応できるマネジメント力を身につけるための研修を実施する。
- 収集運搬体制の確保、仮置場の設置・管理・運営等の初動対応に係る検討課題への対応を進め、発災後の災害廃棄物の円滑・迅速な処理を推進する。
(2)災害廃棄物対策の技術・システムに係る検討
- 南海トラフ地震を想定し、処理期間、広域処理先、仮設焼却施設の必要設置基数、二次仮置場における破砕選別施設の必要設置基数等を踏まえた、全被災ブロックにおける災害廃棄物処理シナリオの検討を行う。
- 南海トラフ地震を想定し、産業廃棄物処理施設における処理可能量の精査、家屋解体に必要な事業者数等を踏まえた、全国的なリソースの確保に向けた検討を行う。
(3)災害廃棄物対策の地域間協調に係る検討
- 地域ブロックをまたぐ広域連携方策について、台風第19号における運用時の調整手順等の整理、各地方環境事務所及びD.Waste-Netメンバーとの意見交換を実施して実効性の向上を図ると共に、広域支援人材の確保に向けた人材バンクの整備等の検討を行う。
- 南海トラフ地震を対象とした具体的な派遣計画について、支援の具体化に向けて全地域ブロックの支援可能なリソースの把握、被災県に対する支援ブロックの割り当ての検討を行うと共に、政府全体のタイムラインとの連動に向けた関係機関との具体的な調整事項の検討を行う。
- 災害時の情報発信のあり方について、住民・ボランティアにわかりやすい広報策の自治体への周知に向けて災害時の効果的な発信事項・手段・時期等の検討を行うと共に、平時からの周知方法の検討を行う。
(4)災害廃棄物対策の初動対応に係る検討
- 自治体の初動対応能力の向上に向けて、全国8ブロックの市区町村向けの説明会の開催、手引きを活用したモデル演習の実施、下水道BCPや受援計画等のガイドラインへの反映等を実施する。
- 令和元年台風第19号等における初動対応の振り返りを通した収集運搬体制の確保、路上堆積ごみへの対応等の検討、首都直下地震を想定した帰宅困難者の生活ごみやし尿の処理等の初動対応の検討等を実施する。
(5)D.Waste-Net の強化
- 収集運搬や広域処理といったテーマ別の分科会を開催し、D.Waste-Netメンバー間の連携強化も実施しつつ、より円滑・迅速な支援体制の構築を図る。
- 環境省とD.Waste-Netメンバーとの間での情報共有を円滑にするための、情報共有アプリの手配に向けたルール等の検討を進める。
- D.Waste-Netメンバーの各都道府県団体と地域ブロック協議会との連携強化による、より円滑・迅速な支援体制の構築に向けた検討を実施する。
(6)国際貢献
- アジア太平洋地域における災害廃棄物対策能力の向上に向け、インドネシアにおける災害廃棄物処理に係る法令整備に対する技術的助言等の支援を実施し、各国・地域での災害廃棄物対策の支援に資する災害廃棄物管理ガイドラインの充実化を図る。
- 我が国の災害廃棄物対策に係るノウハウや技術の効果的売り込みを行うとともに、JICA等の関係機関と連携した被災国支援を推進する。
2.地域ブロックレベルでの検討
- 令和元年度のWGにおける検討成果を、地域ブロック協議会を通じて周知し、南海トラフ地震等の大規模災害に備えた検討の推進を図る。
- 全国8ブロックで初動対応に係る自治体向け説明会を開催し、災害時の一般廃棄物処理に関する初動対応の手引き等を活用し、豪雨災害シーズンまでに、初動対応の重要性を周知し、災害廃棄物処理計画の策定促進を図る。
- 令和元年台風第15号・第19号における、災害廃棄物対策行動計画に基づく人的支援や広域処理支援などの広域支援事例を全ブロック協議会に展開し、行動計画の実効性向上に向けた見直しを推進する。
- 気候変動適応に係る施策と連携しつつ、表裏一体である災害廃棄物対策の推進を図る。
3.自治体レベルでの検討
- 防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策に基づき、引き続き、中小規模自治体を中心とした処理計画策定促進事業を進める。
- 処理計画が未策定の自治体に対して、災害対応において処理計画が有効に活用されたグッドプラクティス・バッドプラクティスを示すことにより、処理計画の策定を促す。
- 市区町村が、発災時の直営・委託の収集運搬車両の体制を把握した上で、平時から近隣自治体、廃棄物処理事業者、建設事業者等との支援協定を締結し、発災時に直ちに戸別回収を含む収集運搬体制を構築できるよう支援する。
- 市区町村に対して、発災時に仮置場においてその後の処理や火災対策に資する分別管理を実施できる人員を確保できるよう、平時から廃棄物処理事業者や建設事業者等との協定の締結を促進する。
- 処理計画の策定状況について、各都道府県、各市区町村の策定状況を公表することにより、未策定自治体に対する策定促進を加速化する。