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巨大地震発生時に想定される事態

巨大地震発生時に想定される事態による影響(1/2)

(1)産業への甚大な影響

地震・津波発生時に、電気、石油・ガス等のライフラインの機能が寸断し、「社会経済活動、サプライチェーンの維持に必要なエネルギー供給の停止」により、廃棄物処理施設の速やかな再稼動が困難になることで、災害廃棄物の処理はおろか、通常のごみ処理すら支障が生じる。

(2)行政機能

「首都圏での中央官庁機能の機能不全」により、政治的措置の遅延が生じたり、政府の緊急災害対策本部等からの指示や調整等が円滑に実施されないことにより、発災初期段階の消火活動や救命救助活動が遅れるとともに、エネルギー供給の停滞や交通網の混乱もあり、広域的な支援体制が機能不全に陥る。

「地方行政機関の職員・施設等の被災による機能の大幅な低下」により、地方公共団体の災害対策本部が機能せず、政府や他地方公共団体等による人的・物的資源の応援されるまでの間は地域の災害復旧対策がほとんど進まなくなる。市町村や県の中枢的機能が喪失した場合においては、上位機関による行政機能の代行が必要となり、人的資源が駆り出され、国、地方ともに長期間人材不足になるため、災害復旧対策に多大な影響。

(3)同時発生の複合災害等

石油コンビナート地帯に近接して市街地が形成されており、「コンビナート・重要な産業施設の損壊、火災、爆発等」、「海上・臨海部の広域複合火災の発生」により、周辺市街地への延焼、危険物質の飛散等の問題が生じるとともに、エネルギー供給や資機材製造にかかわる産業に壊滅的被害が生じることで、災害復旧対策に多大な影響。

「電力供給ネットワーク(発変電所、送配電設備)や石油・LPガスサプライチェーンの機能の停止」により、火力発電所の大部分が運転を停止し、需要抑制(節電要請、電力使用制限令、計画停電等)が必要となり、復旧活動や産業の生産活動が著しく低下し、結果的に資機材の不足につながる可能性。停電が長期化した場合は、非常用発電機の燃料が不足する可能性がある。石油・ガスの不足が長期化することで、燃料確保のため交通渋滞が各地で発生。

(4)交通の機能停止

「太平洋ベルト地帯の幹線が分断する等、基幹的陸上交通ネットワークの機能停止」により、道路施設の損傷、放置車両の発生、鉄道の運行停止に伴う道路交通需要の増大等により、発災直後から、深刻な道路交通麻痺が発生し、救命・救助活動、ライフライン等の応急復旧、物資輸送、災害廃棄物の輸送等に著しい支障等が生じ、広域的な連携活動ができなくなる。

「道路啓開等の復旧・復興を担う人材等の不足により復旧・復興が大幅に遅れる事態」については、特に沿岸部の津波浸水地域では、膨大な道路啓開作業が発生することが想定され、その進捗によっては、復旧・復興に支障が大きくなるとともに、仮置場への災害廃棄物の輸送に著しい支障等が生じる。また、活動要員等の必要な人的・物的資源を適切かつ円滑に搬送できなくなる。

(5)国民の生命・健康への甚大な影響等

津波浸水区域の水産工場において発生する水産系廃棄物等の腐敗とそれに伴う悪臭や害虫が発生。また、避難所のみならず各家庭やテナント等事業系の廃棄物の収集運搬が難航し、廃棄物が山積みされることで、「被災地における疫病・感染症等の大規模発生」を来たす。

「汚水処理施設等の長期にわたる機能停止」により、仮設トイレ等のし尿の収集運搬が新たに必要となるともに、各家庭での簡易トイレから発生する汚物の収集対策、消毒液の散布、等の対策が新たに必要となる。し尿・ごみ収集体制が脆弱な地域では、悪臭の発生のみならず感染症の発生も懸念される。

「有害物質の大規模拡散・流出」により、あらゆる環境媒体への汚染が生じるとともに環境汚染物の一時保管場所の確保や処理体制の確保が新たに必要となる。有害物質や危険物(ボンベ等)の流出の情報がわからない中で、復旧活動従事者による重篤な事故の発生も懸念。

巨大地震発生時に想定される事態による影響(2/2)

(1)産業への甚大な影響

  1. 日本企業(特に製造業)の国内製造拠点の復興が困難(海外製造拠点への機能転換、中小企業の廃業等による人材の喪失)
  2. グローバル社会における競争力、信用の失墜、顧客の流出
  3. 金融サービス(銀行・証券・保険・金融市場等)の機能停止
  4. エネルギー供給の停止、復旧の長期化
  5. 農林水産物・食品の生産をはじめとする食料の安定供給の停滞
  6. サプライチェーンの寸断
  7. 情報通信(郵便を含む)、放送の中断
  8. 失業者数の深刻な増加

(2)行政機能

  1. 政府機能(地方公共団体、立法機関を含む)の低下・停止、それに伴う救援・復旧支援機能の停止、復旧・復興の遅延(人材喪失、施設被災、情報・指示系統の途絶等による)

(3)同時発生の複合災害等

  1. 同時超広域災害による大量の避難者の発生
  2. 地盤沈降による長期浸水
  3. 天然ダムの崩壊
  4. 交通ネットワークの途絶による孤立集落の発生
  5. 大規模火災、海上火災、陸上での延焼等
  6. 危険ガス・物質等の外部への流出(燻蒸倉庫、貯蔵タンクなど)
  7. 地震等による堤防、ダム、ため池等の大規模被害

(4)交通の機能停止

  1. 耐震強化岸壁の被災による救援機能の長期間停止
  2. 空港被災(近隣県の空港の被災により救援機能停止)
  3. 太平洋ベルト地帯の幹線分断(新幹線、高速道路)
  4. 道路網の分断(救援、復旧、復興の障害)、老朽化橋梁の長期機能喪失(通行止め)
  5. 震災後の無秩序な交通流がもたらす混乱(自動車・歩行者・鉄道旅客)
  6. 鉄道・道路沿いの建物倒壊の影響

(5)国民の生命・健康への甚大な影響等

  1. 住宅、建築物の倒壊による大量の人的被害の発生
  2. 消防・警察・自衛隊等が重大に被災する場合、又は被災による傷病者が相当数にのぼる場合等による救助・急・医療活動の重大な不足
  3. 食料・飲料水等生命に関わる物資の提供困難
  4. 疫病・感染症等の蔓延
  5. 治安問題の発生
  6. 上下水道の長期機能停止

(6)その他

  1. 災害時要援護者の増大による甚大な数の人的被害と救援ニーズの増大
  2. 復興に関する合意形成の長期化
  3. 国民のあきらめ、厭世観等の蔓延

※「ナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会(第4回)」(内閣官房)資料5-2(別紙2)「ナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会委員が指摘する事態」より抜粋し、 災害廃棄物処理と関連が強いと思われる事項に印を加筆した。

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