災害廃棄物処理の進捗管理
発生量の推計と処理の進捗管理
環境省では、被災自治体の協力を得て、災害廃棄物等の発生量を推計するとともに、処理の進捗状況を定期的に把握し、全体としての進捗管理を行った。これらのデータは、当初のマスタープランにおける処理目標の設定や、処理費用に対する財政支援に必要な予算額の算定など、様々な施策の基礎データとして活用された。
発生量の推計と処理実績については、被災自治体のデータを継続的に収集・精査し、その時点でもっとも確からしいデータをもとに整理した。これらのデータ収集は、当初は手法が確立しておらず、また、処理に係るデータの記録や整理方法にも自治体による違いがあり、その集約には苦心した。
大きくは災害廃棄物と津波堆積物に区分して、仮置場への搬入と、そこからの処理の内訳(再生利用、焼却処理、埋立処分等)が分かるようにデータの収集を行った。特に被災3県の沿岸市町村については、毎月の進捗管理ができるようにデータの収集を行った。
災害廃棄物の発生量の推計方法
災害廃棄物の発生量については、まず、東日本大震災発生直後に、衛星画像を用いて浸水区域を特定し、これをもとに、環境省において津波により倒壊した家屋等の災害廃棄物量を推計しました(平成23年4月時点では、沿岸市町村における発生量を、岩手県約600万トン、宮城県約1,600万トンと推計)。
その後、災害廃棄物の発生量が比較的少なく、仮置場への搬入が概ね終了した市町村については、搬入済量をもとに適宜推計値を見直し、より実態に近い推計量に置き換えました(平成24年5月7日時点では、岩手県約480万トン、宮城県約1,570万トン)。
災害廃棄物総量推計値の見直しについて
市町村での災害廃棄物の撤去が進むにつれて、災害廃棄物の処理を目標期間内(平成26年3月末まで)に確実に実施するためには、災害廃棄物量の正確な把握が重要であり、岩手県と宮城県に依頼して災害廃棄物推計量の見直しを行った。平成24年5月の見直しでは、岩手県で海から引き上げた災害廃棄物や解体処分することに決まった大型建築物を計上したりして量が増える一方で、宮城県では被災した家屋の解体棟数が見込みより減少したこと(修理して使用する家屋が多かった)や海に流された災害廃棄物が相当量に上ったことにより災害廃棄物推計量が減少した。
平成24年8月の見直しでは、宮城県で処理が必要な津波堆積物の量がより正確に推計され、災害廃棄物と別々に計上されたことにより、量が変わった。さらに、8月以降の処理の進捗に伴い、実際の災害廃棄物の組成・比重が明らかになったことなどから、平成25年5月までに岩手県・宮城県において処理を要する災害廃棄物・津波堆積物の量の再精査が行われた。
また、岩手県と宮城県内での仮設焼却炉の稼働状況や再生利用の推進により、県内での処理可能量が変動する場合があるため、岩手県と宮城県から要請されている広域処理必要量も必要に応じて見直されている。
処理実績
(1)全体での処理状況
13道県、239市町村において、災害廃棄物等の処理が行われたが、目標として掲げた平成26年3月末の時点で、福島県の一部を除く12道県、231市町村において処理が完了し、概ね目標どおり処理が進捗した。以下には、その後の進捗を加えた平成27年3月末の数字を記載する。
災害廃棄物の搬入率、処理割合の推移
津波堆積物の搬入率、処理割合の推移
災害廃棄物及び津波堆積物の処理状況(13道県、平成27年3月末)
都道府県数 | 市町村数 | 処理完了市町村数 | 災害廃棄物等推計量 (千トン) |
処理量(千トン) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
再生利用 | 焼却 | 埋立 | 合計 | |||||
災害廃棄物 | 13 | 239 | 237 (99%) |
20,123 | 162,903 [81%] |
2,431 [12%] |
1,332 [7%] |
20,053 (99%) |
津波堆積物 | 6 | 36 | 35 (99%) |
10,600 | 10,434 [98%] |
- | 166 [2%] |
10,600 (99%) |
注1:処理完了市町村数、処理量の下段(%)は、それぞれ災害廃棄物等発生市町村中の割合、全体量に対する進捗割合を示す。
注2:処理量の内訳の下段[%]は、処理量の合計に対する割合を示す。
(2)災害廃棄物の種類別の内訳
重量ベースでは、可燃系廃棄物が約2割、不燃系廃棄物が約8割で、コンクリートくずが全体の半分以上を占めた。
13道県の災害廃棄物の種類別の内訳(単位:千トン)(平成27年3月末時点)
可燃系廃棄物 | 不燃系廃棄物 | |||
---|---|---|---|---|
3,980 (20%) |
16,043 (80%) |
|||
可燃物 | 木くず | 不燃物 | 金属くず | コンクリートくず |
2,624 (13%) |
1,356 (7%) |
4,906 (25%) |
657 (3%) |
10,480 (52%) |
(3)災害廃棄物の処理の内訳
災害廃棄物全体の8割超に相当する約1,600万トンについて再生利用が行われた。うち約110万トンはセメントの原燃料として利用された。
可燃系廃棄物の約6割(災害廃棄物全体の約12%)が焼却処理された。
再生利用が徹底された結果、埋立処分を行った割合は、不燃物の3割弱(全体の7%)に抑制された。
13道県の災害廃棄物の処理の内訳(単位:千トン)(平成27年3月末時点)
再生利用 | 焼却処理 (熱回収は除く) |
埋立処分 | ||
---|---|---|---|---|
セメント原燃料 | 熱回収 | |||
16,290 (81%) |
1,107 (6%) |
198 (1%) |
2,431 (12%) |
1,332 (7%) |
(4)被災3県での処理状況
被災3県の32沿岸市町村については、平成26年3月末の目標期間内に、岩手県と宮城県はすべての市町村の処理が完了した。
仮置場は、生活圏の災害廃棄物の搬入目標であった平成23年8月あたりをピークに、最大318カ所あったが、福島県内の22カ所まで減少した。
岩手県・宮城県沿岸市町村の災害廃棄物の処理目標と実績
被災3県沿岸市町村での仮置場の設置数の推移
災害廃棄物及び津波堆積物の処理状況(被災3県沿岸市町村、平成26年3月末)
災害廃棄物等 推計量 (万t) |
災害廃棄物 | 津波堆積物 | 仮置場 設置数 |
|||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
推計量 (万t) |
処理 | 推計量 (万t) |
処理 | |||||
量 (万t) |
割合 (%) |
量 (万t) |
割合 (%) |
|||||
岩手県 | 618 | 434 | 434 | 100 | 184 | 184 | 100 | 0 |
宮城県 | 1,888 | 1,160 | 1,160 | 100 | 728 | 728 | 100 | 0 |
福島県 | 309 | 173 | 128 | 74 | 175 | 84 | 48 | 22 |
合計 | 2,855 | 1,768 | 1,723 | 98 | 1,087 | 996 | 92 | 22 |
福島県については、その後処理が進捗し、1年後の平成27年3月末では、沿岸5市町を含む39市町村のうち、37市町村で処理を完了した。残る広野町と南相馬市についても、家屋解体の一部を除き概ね処理を完了した。
災害廃棄物及び津波堆積物の処理状況(福島県、平成27年3月末)
災害廃棄物等 推計量 (万トン) |
災害廃棄物 | 津波堆積物 | 仮置場 設置数 |
|||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
推計量 (万トン) |
処理量 (万トン) |
処理割合 (%) |
推計量 (万トン) |
処理量 (万トン) |
処理割合 (%) |
|||
沿岸5市町 | 304 | 167 | 157 | 94 | 134 | 134 | 99 | 6 |
福島県全体 | 410 | 273 | 263 | 97 | (沿岸5市町のみ) | 6 |
(5)処理費用
東日本大震災では、津波堆積物約1,100万トンを含めて約3,100万トンの災害廃棄物を、約1兆1千5百億円かけて処理したことになり、処理単価は約3.7万円/トンとなった(損壊家屋の解体費用を含む。)。
これまでの災害の実績よりもやや高くついている。他の災害と異なり、津波被害により、塩分を含む津波堆積土混じりの混合廃棄物であることが大きな要因と考えられるが、一方で、地方負担がないことが費用節減への努力を阻害したとの見方もある。
災害の名称 | 処理単価(万円/トン) |
---|---|
阪神・淡路大震災 | 約2.2 |
新潟県中越地震 | 約3.3 |
岩手・宮城内陸地震 | 約1.5 |
東日本大震災 | 約3.7 |